シュタイナーと占星術
シュタイナーに触れていると、時々星の動きや惑星の運行、12サインについてなどの話が出てきます。私は占星術が好きで、アロマテラピーやハーブと同じくらい興味を持って勉強していたため(アロマテラピー占星術やハーブ占星術という分野もありますし)、こういった星に関わるシュタイナーの文章を読むたびに、もう一つの興味であるシュタイナーと他の私の興味がが繋がっている!という嬉しさを感じました。
そこでシュタイナーに関しての著書も多く書いている丹波敏雄著「やさしい占星術」を購入し読んでみます。シュタイナーならではの占星術の解釈が多く説明されていることを期待しましたが、私が知っている一般的なホロスコープチャートの読み方を分かりやすく説明しているという印象でした。
人智学的な解釈として書かれていたのは、一般的な占星術で4つの気質区分というと火・地・風・水で表しますが、それに合わせてシュタイナーの4つの気質(胆汁質・憂鬱質・多血質・粘液質)を割り当てています。
そして3区分は活動宮・不動宮・柔軟宮に分かれますが、これにもそれぞれシュタイナーの3つのプロセスや3層構造とリンクして、硫黄・塩・水銀を割り当てて考えています。
「アストロゾフィ」とは
その本の最後の丹羽敏雄先生の経歴を読んで、初めて「アストロゾフィ」という名前を知ります。丹波先生は「人智学的なアストロゾフィとカバラ的アストロロジーを研究している」というプロフィールでした。
始めて聞いた「アストロゾフィ」について調べてみるのですが、日本語のインターネットではほとんど見つけることができませんでした。「ゾフィ」にヒットしてウルトラマンの情報ばかりでした(笑)。
ようやく見つけたのは海外のサイトです。私はそんなに英語ができるわけではないので、そのサイトで内容を理解するのは難しいのですが翻訳機能を駆使して読んでいくと、どうやら1902年生まれで1985年に亡くなったWilli Sucher(ウィリー・スチャー)という人物が、シュタイナーの思想や哲学を基に確立させた「人智学による星の叡智」がアストロゾフィと名付けられ、現在も興味のある人々によって学び続けられている、との事。
1902年生まれという事は、シュタイナーが亡くなったのが1925年なので、20年ほどシュタイナーと同じ時代を過ごしています。彼は実際にシュタイナーに会い、シュタイナーの講義にも参加していたようです。
サイトではウィリー・スチャーの文献を読むことができる他、希望する人にのみではありますが、登録することによって無料の動画配信が見られるようになっています。(動画は無料ですが、活動資金ための寄付も集めています。)
私もその文献を読んだり動画を少し見てみましたが、とても難しく分からないことだらけでした。バースチャートの書き方も独特です。例えばチャート上で一般的に使われる12等分された黄道12宮を使わず、12星座を使っているので星座によって大きさがそれぞれ違ったりするなどです。黄道12星座と12宮の違いについては『バイオダイナミック農法と占星術』でもう少し詳しく書いています。
『世界史と占星術』の参考書籍エリザベス・ヴリーデ
また、日本で読む事ができるシュタイナーと占星術について書かれている書籍としては、ニコラス・キャンピオン著の『世界史と占星術』という本を見つけました。ここにはほんの数ページですが、シュタイナーと占星術の関りについて歴史の流れとともに説明されていて、その参考文献にはエリザベス・ヴリーデ著『Anthroposophy and Astrology』という本が紹介されています。エリザベス・ヴリーデ(1879~1943)は、オランダ出身でシュタイナーの教え子であり、様々な人智学活動をシュタイナーと共に行っていたようです。彼女はルドルフ・シュタイナーから、ゲーテアヌムにある精神科学の学校で数学・天文部門の責任者に任命されており、1920年代後半に精神科学の観点から現代天文学と古典占星術についてニュースレターを毎月発行していたそうです。その文章を抜粋してまとめたものが後になって『Anthroposophy and Astrology』として2001年に出版されているようです。
『世界史と占星術』ではシュタイナーが提唱した占星術は、やはり一般的な占星術とは異なり、通常のホロスコープの均等に12分された12宮ではなく、恒星からなる12星座を用いるため、独特なものだったと言っています。一般の人には公開されなかった、とも書かれています。
この『世界史と占星術』の著書のニコラス・キャンピオンという人物は元々歴史学者で占星術師でもあるそうです。なのでこの本は、どこを読んでもとても詳細な歴史的、文化的な流れの中で占星術との関りを説明しているので面白いです。しかしそんな中でウィリー・スチャーという名前が出てこないのも疑問でした。
シュタイナー『星と人間』など
宇宙の星と私達人間の関りを説明するシュタイナーの本もいくつか日本で出版されています。そのなかの一つに『星と人間』(風濤社刊、西川隆範訳)があり、そこでは惑星や黄道12宮と人間との関りを精神科学的に説明しています。私には理解できない部分がたくさんあります。それでも時々語られる星と人間のかかわりについてのシュタイナーからの言葉にはわくわくさせられる部分がたくさんありました。
この本を読むと、シュタイナー的にホロスコープや星について考えることは、「自分の運勢を占うホロスコープ」というよりは、もっと大きな学びと成長のためのツールなのかもと、ホロスコープとの付き合い方を考えてしまったりもします。
また、この本を編訳されている故西川隆範先生のあとがきに、
「本来なら本書はシュタイナーカレッジのブライアン・グレイ教授の下でアストロソフィーを研究しておられた、作家の冥王まさ子さんが取り組まれる仕事の一つではなかったかと思います。彼女が思いがけぬ帰天の途につかれて、この春七周忌を迎えました。・・・」
とあるので、シュタイナーカレッジでアストロソフィーを学ぶ場があるのですね。前述したアストロゾフィのサイトのものとの違いなども気になります。分かる方がいらっしゃったら教えていただきたいです。この作家の方がまだご存命でしたら教えていただく機会もあったかと思うと残念です。
現代の知識や一般的な常識からいうと「ホロスコープなんてただの迷信みたいなもの?」と考えてしまいそうになります。ですが、日々ホロスコープを身近に感じていた私には”星の動きが全く私たちの日常に影響がない”、というようには思えないのです。そんな中で、『星と人間』の中で、「私たちの無意識は物質生活とは別の星位に従っている」という記述があります。日常の表面的なラッキー、アンラッキーでなく、もっと内面的な所で星は私たちに何かを語りかけている、という事なのでしょうか。
そしてシュタイナーは、「人間は星位に従って、地球に生まれます。しかし、人間は正しい方法で星位から自立し、意志を持って発展させなければならない」と言っています。ただ何となくホロスコープを信じて右往左往するのではなく、意志を持って未来へ進む事がなによりも大切なのかなと思っています。
2023年8月追記事項
「アストロゾフィ」について
丹羽敏雄先生が2022年10月に新しい書籍『占星術とカルマ』(涼風書林刊)という本を出しています。こちらでのプロフィール欄では「アストロゾフィ」という記述がなくなっています。その代わり”「占星学」を研究”との表記になりました。「アストロゾフィ」は一般的な占星術とは違った解釈が多く、丹羽先生は一般的な占星術の読み方をされているので「アストロゾフィ」という表現をつかうのは止めたのかなと思っています。
海外のアストロゾフィのサイトでは現在も更新して情報をアップしています。